
写真:Hurohukidaikon, Wikimedia Commons(CC BY 4.0)/2024年能登半島地震による輪島市内の土砂崩れ
登山中に地震が起きたらどうする?場所別の対処法と事前準備を解説
目次
- 登山中に地震が起きたら、まず何をすべきか
- 地震発生直後にすること(共通)
- 場所別の対処法
- 稜線・尾根上にいるとき
- 岩場・鎖場にいるとき
- 沢・沢沿いのルートにいるとき
- 樹林帯(森の中)にいるとき
- 山小屋の中にいるとき
- 揺れが収まったあとの下山判断
- 下山を優先すべき状況
- 山小屋に留まるべき状況
- 下山ルートを選ぶポイント
- 下山中に注意すること
- 余震への備え
- 落石サインを見逃さない
- 橋・桟道の通過は慎重に
- 緊急時の連絡方法
- 1. 山岳救助の要請
- 2. YAMAPの緊急機能
- 3. コンパスの緊急連絡
- 4. 衛星通信(今後の装備として)
- 事前の準備・持ち物
- ヘルメット
- 登山届(登山計画書)の提出
- ファーストエイドキット(応急処置セット)
- 非常食・水の予備
- ビバーク装備(緊急時の一泊)
- よくある質問
- Q. 地震が来たとき、すぐに下山すべきですか?
- Q. スマートフォンは地震後も使えますか?
- Q. 同行者がけがをしてしまった場合は?
- Q. 余震はいつまで続きますか?
- Q. 山小屋にいれば安全ですか?
- まとめ
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登山中に地震が起きたら、まず何をすべきか
結論からいうと、揺れを感じたら即座に頭を守り、揺れが収まるまで動かないことが最初の行動です。
山の中で地震が起きると、市街地とは比べものにならないほど多くの危険が一気に発生します。落石・崖崩れ・地滑り・沢の増水・登山道の亀裂など、地震の揺れが直接引き起こす二次災害が、登山者の命を脅かします。
2014年の御嶽山噴火(噴火直前に火山性地震が急増した事例)や、大規模な地震によって山岳地帯で崖崩れや道の崩壊が起きた事例は、日本の登山史に多く刻まれています。「自分は大丈夫」と思わず、地震の知識と対処法を事前に頭に入れておくことが大切です。
地震発生直後にすること(共通)
場所を問わず、地震が起きた瞬間に共通して行うべき行動があります。
-
ザックを頭の上に乗せて頭を守る ヘルメットを被っていない場合、ザックが落石から頭を守る盾になります。しゃがんだ姿勢でザックを頭上に
-
その場で低い姿勢をとる 立っていると揺れで転倒し、崖から落ちるリスクが高まります。膝をついてしゃがみ込み、重心を下げる
-
揺れが収まるまで動かない 揺れの最中に走ろうとすると転倒・滑落の危険があります。じっと待つのが正解
-
仲間に大声で知らせる グループ登山中なら「地震!」と叫んで全員が同じ行動をとれるようにする
-
余震に備える 本震の直後に大きな余震が来ることが多いです。揺れが収まっても警戒を続け、安全な場所へ移動する
場所別の対処法
稜線・尾根上にいるとき
稜線は最も危険な場所のひとつです。両側が切れ落ちた尾根では、揺れによる転落リスクが非常に高くなります。
すぐにすること
- 稜線の中央に寄る(端に近いほど危険)
- 低い姿勢でしゃがみ込み、四つん這いになる
- 岩の陰・くぼみに入れるなら入る
- 崖側には絶対に近づかない
揺れが収まったら
- 足元の亀裂・崩壊がないか慎重に確認してから動く
- 両側の斜面から落石・崩壊が来ないか目で確認する
- 稜線の先が崩壊している可能性があるため、慎重に進む
岩場・鎖場にいるとき
鎖場・梯子・岩場の登り下り中に地震が起きた場合は、その場に張り付いて動かないのが基本です。
すぐにすること
- 岩にしがみつき、体を岩壁に密着させる
- 鎖やホールドをしっかり握る(手放さない)
- 頭を岩壁側に向け、上からの落石を岩で遮る形をとる
- 鎖を掴んだまま体を小さくしてしゃがむ
揺れが収まったら
- 落石が来ないか頭上を確認してから動く
- 岩が崩れていないか確認(ホールドが外れていないか)
- 岩場を登り続けるか、安全に引き返すか判断する
- 鎖や梯子が損傷していれば使用しない
注意:揺れの最中に急いで降りようとすると、滑落の危険があります。揺れが完全に収まってから行動してください。
沢・沢沿いのルートにいるとき
沢・沢沿いは地震後に最も二次災害が起きやすい場所です。地震による崩壊・土砂崩れが起きると、土石流となって沢を流れ下ります。揺れが収まっても「安全」とは言えません。
すぐにすること
- 落石から身を守るため岩陰や木の根元に隠れる
- 揺れが収まったら、すぐに沢を離れて高い場所へ移動する
- 沢の上流方向から濁った水・轟音が来ていないか確認する
揺れが収まったら
- 土石流に備え、沢から高所へ素早く避難する(この判断が最も重要)
- 沢の水が急に濁ったり増水した場合は土石流の前触れ
- 沢沿いのルートは通行できない可能性が高いため、別ルートを検討する
**沢では地震後の行動が最も重要です。**揺れが収まったら即座に沢から離れることを最優先にしてください。
樹林帯(森の中)にいるとき
樹林帯は落石リスクが比較的低いですが、倒木・落枝の危険があります。
すぐにすること
- 大きな木の根元やそばには近づかない(倒木の危険)
- 開けた場所があれば移動する
- 落枝を頭上に注意しながら、しゃがんで揺れをやり過ごす
- 倒木が少ない開けたポイントへ移動する
揺れが収まったら
- 倒木・落枝で登山道がふさがれていないか確認
- 傾いた木・根の浮いた木のそばを通るときは慎重に
- 足元の地割れ・陥没に注意して進む
山小屋の中にいるとき
山小屋は石造・木造・コンクリート造とさまざまです。いずれもテーブルや頑丈な家具の下に入って頭を守るのが基本です。
すぐにすること
- テーブルや頑丈な棚の下に入り、頭を守る
- ストーブ・燃料ランタンから離れる(転倒による火災を防ぐ)
- 出口への動線を確認しておく(扉が歪んで開かなくなる可能性)
揺れが収まったら
- 火が出ていないか確認し、出火していれば消火する
- 小屋管理人の指示に従う
- 小屋の損傷・倒壊リスクがある場合は外へ避難する
- 外に出た後は建物から離れた場所で余震を待つ
揺れが収まったあとの下山判断
地震後は「揺れが収まれば安全」ではありません。以下の状況を総合的に判断して下山を決めてください。
下山を優先すべき状況
- 登山道が崩壊・亀裂している
- 沢が増水・濁っている(土石流の危険)
- 落石・崩壊が続いている
- 余震が繰り返し来ている
- ケガ人が出た
山小屋に留まるべき状況
- 周辺の道が通行不能になっている
- 夜間・視界不良で安全に降りられない
- 山小屋管理人が「留まるよう」指示している
下山ルートを選ぶポイント
| 避けるべきルート | 理由 |
|---|---|
| 沢沿いのルート | 土石流・増水リスク |
| 崖下を通るルート | 落石リスク継続 |
| 崩壊した橋・桟道 | 構造が弱まっている |
| 地割れが発生した斜面 | 地滑りの前兆 |
山と平行に歩ける別ルートがある場合は、沢沿いよりも尾根側のルートを選んでください。
下山中に注意すること
余震への備え
本震後も余震が続きます。余震が来たら登山中と同じく即座にしゃがんで頭を守る行動をとってください。特に岩場・鎖場では「揺れが来そうな予感がしたら止まる」意識を持つことが大切です。
落石サインを見逃さない
- 上から小石がぱらぱら落ちてくる → 大きな落石の前触れ
- 「ゴーッ」「バキバキ」という音がする → 崩壊が起きている
- 上記の場合はすぐに岩陰に入るか、落石の飛んでこない場所へ移動する
橋・桟道の通過は慎重に
地震後、木製の橋・桟道・鎖場の固定部分が緩んでいる場合があります。一人ずつ、体重をかけながら足元を確認して渡ってください。
緊急時の連絡方法
1. 山岳救助の要請
ケガ人がいる・自力下山が不可能な場合は、**110番(警察)または 119番(消防)**へ電話します。山中で繋がらない場合は、稜線や開けた場所へ移動してから試みてください。
- **「登山中に地震が発生し、〇〇山の〇合目付近にいます」**と状況を簡潔に伝える
- GPS座標(YAMAPアプリの現在地)を読み上げると迅速に伝わる
2. YAMAPの緊急機能
YAMAPアプリには**「SOS機能」**があります。スマートフォンのGPS情報をもとに現在地を共有し、緊急連絡先へ通知できます。
3. コンパスの緊急連絡
登山アプリ「コンパス」(登山届アプリ)では、登山届に記載した緊急連絡先へ現在地情報を共有できます。
4. 衛星通信(今後の装備として)
衛星通信機能を持つデバイス(garminのInReach・SPOT等)があれば、圏外でも救助要請が可能です。本格的な山岳登山では導入を検討する価値があります。
事前の準備・持ち物
ヘルメット
岩場・沢・アルプス級の山では必携です。地震による落石から頭を守る最も有効な手段です。登山用ヘルメット(EN12492準拠・UIAA認証品)を選んでください。
- 対象ルート:鎖場のある山、沢登り、北アルプス・南アルプスの岩稜帯
- 低山ハイキングでも地震リスクを考慮するなら持参を検討
登山届(登山計画書)の提出
- 登山届を出しておけば、地震後に救助隊が「どの山の、どのルートに登山者がいるか」を把握できます
- YAMAPコンパス・警察署・登山口のポストで提出可能
- 家族・友人への「下山予定時刻」の共有も重要
ファーストエイドキット(応急処置セット)
地震による転倒・落石で出血することがあります。最低限の応急処置ができるキットを携行してください。
- 止血用ガーゼ・包帯
- 三角巾
- 医療用テープ
- 消毒液
- 常備薬
非常食・水の予備
地震で下山ルートが使えなくなった場合、山中で数時間〜一晩過ごすことがあります。
- 非常食(カロリーメイト・ゼリー飲料・ナッツ等)を通常より余分に持つ
- 水は最低1.5〜2L(地震後に水場が使えなくなることもある)
ビバーク装備(緊急時の一泊)
岩場や沢ルートなど、地震後に下山が困難になりやすいルートでは、緊急ビバーク(野外泊)の装備を持っていると安心です。
- エマージェンシーブランケット(軽量・コンパクト・保温効果が高い)
- ツェルト(軽量の緊急テント)
- 防水マッチ・ライター
よくある質問
Q. 地震が来たとき、すぐに下山すべきですか?
A. 揺れが完全に収まるまで動いてはいけません。焦って動くことが最大の危険です。
揺れの最中に走ると、岩場や崖ではバランスを崩して滑落します。まず「その場にしゃがんで頭を守る」を最優先にしてください。揺れが収まったあと、周囲の安全を確認してから行動を開始します。
Q. スマートフォンは地震後も使えますか?
A. 回線が混雑してつながりにくくなることが多いです。
大規模地震の直後は、電話が繋がりにくくなります。SMSや災害用伝言板(171)の方が繋がりやすいケースがあります。電源節約のため、画面の明るさを下げて待機してください。
Q. 同行者がけがをしてしまった場合は?
A. まず安全な場所へ移動し、応急処置を行ったうえで救助を要請してください。
重傷の場合(骨折・大量出血・頭部打撲)は自力搬送せず、救助隊の到着を待つことが原則です。軽傷であれば応急処置後に状況を見て下山を検討します。
Q. 余震はいつまで続きますか?
A. 予測できません。数分〜数日、場合によっては数週間続くこともあります。
大きな余震は本震から数時間〜数日の間に来ることが多いです。「もう大丈夫だろう」と判断せず、常に余震が来ることを想定した行動を続けてください。
Q. 山小屋にいれば安全ですか?
A. 木造山小屋でも適切な行動をとれば安全度が上がりますが、過信は禁物です。
古い山小屋では、大地震で柱が歪んだり屋根が崩れたりする可能性があります。揺れを感じたらテーブルの下など頑丈な場所に隠れ、揺れが収まったら出口を確保してください。
まとめ
- 地震発生直後は「しゃがんで頭を守り、揺れが収まるまで動かない」
- 場所によってリスクが異なる。沢は最も危険(土石流)、岩場は落石・滑落、稜線は転落
- 沢・沢沿いでは揺れが収まったら即座に高所へ避難する(これが最優先)
- 下山判断は焦らず。ルートの安全を確認してから行動する
- 余震は続く。常に「次の揺れが来る」前提で行動する
- 事前準備が命を守る。登山届・ヘルメット・応急処置セット・非常食・エマージェンシーブランケット
- YAMAPのSOS機能など緊急連絡手段を使いこなしておく
地震はいつ・どこで起きるかわかりません。登山に行くたびに「もし揺れたら」を一度イメージしておくだけで、いざという時の行動が大きく変わります。
