
Alpsdake, Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)/スバリ岳から望む針ノ木岳
針ノ木岳 登山ガイド|扇沢(針ノ木雪渓・針ノ木峠)コースと蓮華岳・爺ヶ岳周回、針ノ木小屋・大沢小屋情報【2026年】
北アルプス・後立山連峰の日本二百名山・針ノ木岳(標高2,821m)の登山ガイド。扇沢から日本三大雪渓の針ノ木雪渓・針ノ木峠を経て登る往復コースや蓮華岳、スバリ岳・赤沢岳・鳴沢岳・新越山荘・種池山荘・爺ヶ岳への周回コースの長野県登山グレーディング、針ノ木小屋・大沢小屋の2026年営業期間・料金、扇沢の駐車場・アクセスを公式情報をもとに解説します。
目次
- 針ノ木岳の基本情報
- 日本三大雪渓「針ノ木雪渓」と日本三大峠「針ノ木峠」
- 長野県「信州 山のグレーディング」とコース概要
- ① 扇沢〜針ノ木雪渓〜針ノ木峠〜針ノ木岳 往復コース(+蓮華岳)
- ② 針ノ木岳〜スバリ岳〜赤沢岳〜鳴沢岳〜新越山荘〜種池山荘〜扇沢 周回コース
- ③ 針ノ木岳〜蓮華岳〜北葛岳〜七倉岳〜船窪小屋〜七倉 縦走コース
- 山小屋・テント場情報(2026年シーズン)
- 1. 針ノ木小屋(はりのきごや)
- 2. 大沢小屋(おおさわごや)
- アクセス・駐車場情報
- 針ノ木登山口(扇沢駅)へのアクセス
- 針ノ木岳登山の注意点
- 1. 針ノ木雪渓のアイゼン装備とルート確認
- 2. 9月下旬の小屋閉めに伴う橋・梯子の撤去
- 3. 15時までの小屋到着とクマの生息
- 参考リンク
針ノ木岳(はりのきだけ)は、長野県大町市と富山県中新川郡立山町の境(後立山連峰の南部、北アルプスのほぼ中央)に位置する標高2,821mの山です。眼下に黒部湖(黒部ダム)を見下ろし、立山・剱岳をはじめとする北アルプス全域を360度見渡せる展望の山として知られています。また、1584年(天正12年)冬に越中城主・佐々成政が厳冬期の針ノ木峠を越えたとする「さらさら越え」の伝説でも名高い歴史ある山です。
登山口となる長野県大町市の扇沢(標高1,418m)から針ノ木峠(標高2,536m)へ登るルートには、白馬大雪渓・剱沢大雪渓と並び「日本三大雪渓」の一つに数えられる針ノ木雪渓があります。針ノ木峠を挟んで東側にはコマクサの大群生地で知られる蓮華岳(標高2,799m)が対峙し、北へはスバリ岳・赤沢岳・鳴沢岳・新越山荘・種池山荘・爺ヶ岳へと続く後立山連峰南部周回コース、南西へは七倉岳・船窪小屋方面への縦走路が延びています。
この記事では、長野県「信州 山のグレーディング」、大町市観光協会、針ノ木小屋・大沢小屋の公式情報をもとに、針ノ木岳の主要コース、雪渓歩きの注意点、山小屋・テント場、扇沢の駐車場・アクセスを解説します。
針ノ木岳の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 山名 | 針ノ木岳(はりのきだけ) |
| 標高 | 2,821m |
| 所在地 | 長野県大町市、富山県中新川郡立山町 |
| 山域 | 北アルプス(後立山連峰南部・中部山岳国立公園) |
| 主な登山口 | 針ノ木登山口(扇沢駅横・標高1,418m) |
| 技術的難易度 | グレードB〜C(コースにより異なる/長野県登山グレーディング) |
| 体力度 | 3〜7(1泊以上が適当〜2〜3泊以上が適当/長野県登山グレーディング) |
| 登山適期 | 7月上旬〜9月下旬(針ノ木小屋の営業期間に準じる) |
日本三大雪渓「針ノ木雪渓」と日本三大峠「針ノ木峠」
針ノ木小屋および大町市観光協会の公式案内では、針ノ木岳周辺の自然・歴史について以下の特徴が紹介されています。
- 日本三大雪渓(針ノ木雪渓):白馬大雪渓(白馬岳)、剱沢大雪渓(剱岳)とともに日本三大雪渓とされ、例年6月末の小屋開け後から8月中旬頃まで雪渓歩きが行われます(8月中旬以降は夏道となります)。
- 日本三大峠(針ノ木峠・標高2,536m):雁坂峠(埼玉県・山梨県)、三伏峠(長野県)とともに歴史的背景や標高の高さから日本三大峠の一つとされ、針ノ木岳と蓮華岳の鞍部に1930年(昭和5年)創設の針ノ木小屋が建っています。
- 山名の由来と佐々成政伝説:大町市観光協会の案内によると、山名の「針ノ木」は付近に生える「ハンノキ」からの転訛といわれ、1584年冬の越中城主・佐々成政による針ノ木岳越えの伝説が残っています。
長野県「信州 山のグレーディング」とコース概要
長野県「信州 山のグレーディング」および「日本百名山 登山ルート別グレーディング一覧表」では、針ノ木岳および隣接する蓮華岳・後立山連峰南部周回コースについて以下の数値が公表されています。
| ルート名 | 体力度 | 技術的難易度 | 参考タイム(休憩含まず) | ルート長 | 累積登り/下り |
|---|---|---|---|---|---|
| 針ノ木岳(扇沢往復) | 4(1泊以上が適当) | B | 9時間30分(9.5時間) | 12.3km | 1,510m/1,510m |
| 蓮華岳(扇沢往復) | 4(1泊以上が適当) | B | 10時間0分(10.0時間) | 13.5km | 1,540m/1,540m |
| 【周】鳴沢岳・スバリ岳・針ノ木岳(扇沢発着) | 7(2〜3泊以上が適当) | B | 14時間50分(14.8時間) | 21.3km | 2,560m/2,560m |
| ④針ノ木岳→岩小屋沢岳(針ノ木小屋→種池山荘) | 3(1泊以上が適当) | C | 7時間50分(7.8時間) | 10.3km | 870m/980m |
| ③七倉岳→蓮華岳(船窪小屋→針ノ木小屋) | 3(1泊以上が適当) | C | 5時間50分(5.8時間) | 6.4km | 740m/630m |
※長野県のグレーディングにおける技術的難易度は以下の通りです。
- グレードB:沢、崖、場所により雪渓などを通過する。急な登下降がある。道が分かりにくい所がある。転倒・滑落の危険箇所がある。
- グレードC:ハシゴ・くさり場、また場所により雪渓や渡渉箇所がある。ミスをすると転落・滑落などの事故となる場所がある。案内標識が不十分な箇所が含まれる。
① 扇沢〜針ノ木雪渓〜針ノ木峠〜針ノ木岳 往復コース(+蓮華岳)
関電トンネル電気バス扇沢駅舎に向かって左側にある作業用車両ゲート横の「針ノ木登山口」(標高1,418m)から入山し、大沢小屋・針ノ木雪渓を経て針ノ木峠(針ノ木小屋・標高2,536m)へ登り、針ノ木岳山頂(標高2,821m)を往復するメインルートです。
- 主な経由地:扇沢(針ノ木登山口・1,418m) → 大沢小屋(1,680m) → 針ノ木雪渓 → マヤクボ沢出合 → 針ノ木峠・針ノ木小屋(2,536m) → 針ノ木岳(2,821m) → (往路を下山) → 扇沢
- 体力度・難易度:体力度4・難易度B
- コース距離・標高差:ルート長12.3km、累積標高差(登り1,510m/下り1,510m)、標準コースタイム約9時間30分
- 大町市観光協会モデルコースの目安時間:扇沢駅横の登山口から約1時間10分で大沢小屋、さらに約40分で針ノ木雪渓尻、登山口から合計約3時間で針ノ木峠(針ノ木小屋)に到着します。針ノ木小屋に宿泊し、荷物を置いて反対側の蓮華岳(標高2,799m・コマクサ群生地)と針ノ木岳の両方を登る1泊2日プランが広く歩かれています。
- 特徴と注意点:
- 6月末〜8月中旬頃の雪渓期間中は、6本爪以上のアイゼンの着用が推奨されており、ピッケルやヘルメットなどの装備も安全のために有効です。雪渓の融解状況により夏道との切り替わり箇所(高巻き・秋道)が変化するため、マヤクボ分岐〜最後の急登にかけての分岐見落としに注意が必要です。
- 8月中旬以降は完全に夏道(土の道)となり、沢の渡渉や鎖場を通過するため、雨天時の増水や落石に注意が必要です。
② 針ノ木岳〜スバリ岳〜赤沢岳〜鳴沢岳〜新越山荘〜種池山荘〜扇沢 周回コース
針ノ木峠から針ノ木岳に登り、北へスバリ岳・赤沢岳・鳴沢岳・新越山荘・岩小屋沢岳・種池山荘・爺ヶ岳を経て、柏原新道で扇沢へ下山する後立山連峰南部の周回コースです。
- 主な経由地:扇沢(1,418m) → 針ノ木小屋(2,536m) → 針ノ木岳(2,821m) → スバリ岳 → 赤沢岳 → 鳴沢岳 → 新越山荘(2,465m) → 岩小屋沢岳 → 種池山荘(2,450m) → 爺ヶ岳 → 柏原新道 → 扇沢
- 体力度・難易度:
- 扇沢発着周回全体:体力度7・難易度B(ルート長21.3km、累積登り2,560m/下り2,560m、参考タイム約14時間50分)
- 針ノ木小屋〜種池山荘区間:体力度3・難易度C(ルート長10.3km、累積登り870m/下り980m、参考タイム約7時間50分)
- 特徴と注意点:
- 大町市観光協会のモデルコースでは、1泊目に針ノ木小屋、2泊目に新越山荘(針ノ木小屋から約5時間)または種池山荘(針ノ木小屋から約7時間)に宿泊する2泊3日コースとして案内されています。
- 針ノ木小屋〜新越山荘間は細かなアップダウンが続くため、早出と十分な飲料水の携行が必要です。なお新越山荘にはテント場がないため、テント泊の場合は針ノ木小屋テント場と種池山荘テント場を利用します。
③ 針ノ木岳〜蓮華岳〜北葛岳〜七倉岳〜船窪小屋〜七倉 縦走コース
針ノ木峠から東の蓮華岳へ登り、「蓮華の大下り」を経て北葛岳・七倉岳・船窪小屋・七倉登山口へと縦走するルートです。
- 主な経由地:扇沢 → 針ノ木小屋 → 蓮華岳(2,799m) → 蓮華の大下り → 北葛岳 → 七倉岳 → 船窪小屋(2,450m) → 七倉登山口
- 体力度・難易度:船窪小屋〜針ノ木小屋間は体力度3・難易度C(ルート長6.4km、累積登り740m/下り630m、参考タイム約5時間50分)
- 特徴と注意点:
- 蓮華岳から北葛岳へ向かう下り斜面にはコマクサの群落が広がりますが、急峻な岩場・鎖場である「蓮華の大下り」や北葛岳周辺の険しいアップダウンを通過するため、慎重な行動が求められます。
山小屋・テント場情報(2026年シーズン)
1. 針ノ木小屋(はりのきごや)
針ノ木岳と蓮華岳の鞍部、針ノ木峠(標高2,536m)に建つ山小屋です(近代登山の先駆者・百瀬慎太郎氏により1930年創設)。
| 項目 | 内容(2026年シーズン公式情報) |
|---|---|
| 所在地・標高 | 針ノ木峠(標高2,536m) |
| 2026年営業期間 | 2026年7月1日〜9月27日ご宿泊分まで(※2026年営業終了) |
| 収容人数・予約 | 定員約60名(小屋泊は完全予約制/WEBまたは電話 0261-22-1584・小屋直通 090-2323-7145)※遅くとも15時までに到着する計画が必要 |
| 小屋泊料金 | 1泊2食付:14,000円(宿泊料9,500円、夕食2,500円、朝食2,000円) お弁当:1,200円(※予約確定後のキャンセルは1人2,000円、日程変更は無料) |
| テント場 | あり(予約不要・先着順/1人1泊1,500円) ※希望者は15時までの受付で小屋での食事利用可(小屋泊価格+300円) |
| 水・トイレ・設備 | 水:宿泊者に1L無料提供(追加は水200円/L、お湯300円/Lで販売) トイレ:館内バイオトイレ(通過・テント泊者は100円)、小屋西側30mの外トイレは無料 売店・食堂営業:8:00〜15:00(営業時間中は宿泊・テント問わず充電サービス提供あり) |
※針ノ木小屋は9月27日の宿泊をもって営業終了となり、営業終了後は外トイレのほか、登山道上の渡渉用の橋や梯子も撤去されるため、10月以降の入山には厳重な注意が必要です。
2. 大沢小屋(おおさわごや)
扇沢と針ノ木小屋の間(扇沢から徒歩約1時間〜1時間10分、標高1,680m)に建つ山小屋で、入口には創設者・百瀬慎太郎氏の肖像レリーフが掲げられています。
| 項目 | 内容(2026年シーズン公式情報) |
|---|---|
| 所在地・標高 | 扇沢〜針ノ木雪渓間の登山道沿い(標高1,680m) |
| 2026年営業期間 | 7月下旬頃から約1か月間(※2026年は8月17日に営業終了) |
| 小屋泊料金 | 宿泊料9,000円、夕食2,200円、朝食1,800円(1泊2食付13,000円/事務所 0261-22-1584 へ要相談) |
| テント場 | なし(大沢小屋ではテント場の営業はありません) |
アクセス・駐車場情報
針ノ木登山口(扇沢駅)へのアクセス
- 登山口の位置:関電トンネル電気バス「扇沢駅」駅舎に向かって左にある作業用車両ゲート横が針ノ木登山口です。扇沢駅に公衆トイレがあります。
- 路線バス・特急バス:
- JR大糸線「信濃大町駅」からアルピコ交通の路線バス(扇沢線)で約40分(片道2,000円、大町温泉郷から1,700円)、「扇沢駅」下車すぐ。
- JR長野駅東口から特急バス(長野ー大町線)も運行されています。
- タクシー・マイカー:
- JR信濃大町駅からタクシーで約35分(約8,700円)。
- マイカーは長野自動車道「安曇野IC」から一般道で約60分。
- 扇沢駅の駐車場:
- 扇沢有料駐車場(第1・第2・第3):合計350台(12時間まで1,000円、超過12時間まで1,000円、自動精算機は千円札のみ使用可、扇沢駅まで徒歩約5分)。
- 扇沢市営第1駐車場(無料):約170台(扇沢駅まで徒歩約10分)。※舗装工事のため、**2026年10月19日(月)〜11月16日(月)**は利用休止。
- 扇沢市営第2駐車場(無料):約60台(扇沢駅まで徒歩約10分)。
針ノ木岳登山の注意点
1. 針ノ木雪渓のアイゼン装備とルート確認
例年6月末〜8月中旬頃の雪渓期間中は、6本爪以上のアイゼン着用が推奨されています。雪渓の融解状況によって夏道への分岐位置が日々変わるため、特にマヤクボ分岐から最後の急登にかけてのルート見落としに注意し、入山前に針ノ木小屋の公式SNS等で最新の雪渓・登山道情報を確認してください。
2. 9月下旬の小屋閉めに伴う橋・梯子の撤去
針ノ木小屋は周辺の冷池山荘・種池山荘(10月中旬まで営業)よりも早く、9月下旬(2026年は9月27日宿泊分)で営業を終了します。営業終了後は外トイレが閉鎖されるほか、沢の渡渉用の橋や梯子も撤去されるため、営業期間外の入山は難易度が大きく上がります。
3. 15時までの小屋到着とクマの生息
針ノ木小屋では安全管理のため、遅くとも15時までに小屋へ到着する登山計画を求めています(17時以降も未着で連絡がない場合は遭難捜索を実施し費用請求となる可能性があります)。また、針ノ木小屋・大沢小屋周辺の山域にもツキノワグマが生息しているため、クマ鈴の携行や食料・ゴミの管理を徹底してください。
参考リンク
執筆・確認
山日記編集部
実際の山行記録や公的機関・自治体の最新情報をもとに、登山ルート・装備・安全対策をわかりやすく整理して発信しています。 登山道・交通・施設情報は変わるため、記事公開後も必要に応じて更新し、最新確認先も案内しています。
